洗浄・消毒・滅菌 Q&A

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次亜塩素酸ナトリウム希釈液の保管に当たり、直射日光の影響により塩素の残留率の低下が著しいといわれていますが、蛍光灯の光の影響はどの程度ありますでしょうか?(A.K.)

蛍光灯の光の影響は小さいと推定されます。

ご指摘のとおり、次亜塩素酸ナトリウムは直射日光で急速に分解します。夏季の直射日光下では、0.1%(1,000ppm)液は4時間ほどで効力がほぼゼロになりました。しかし、蛍光灯の光の影響は小さいと推定されます。表1に、蛍光灯下(約500ルクスの照度)での次亜塩素酸ナトリウム液の残存力価を示しましたが、28日間まで効力の低下はみられませんでした。なお、28日後でやや濃度が高くなっていますが、この理由として水分の蒸発による次亜塩素酸ナトリウム液の濃縮が推定されました。

次亜塩素酸ナトリウム製品では、製造後の使用期限が6か月~3年間と、製品によってかなり幅があります。また、室温保管でよい製品もありますし、冷所保管すべき製品もあります。前述の表1は、有効期限が3年間で室温保管の1製品について調べた結果ですので断定的なことは言えませんが、蛍光灯の光は次亜塩素酸ナトリウムの安定性に大きな影響はないと考えられます。

ただし、汚れ(有機物)が混入した次亜塩素酸ナトリウム液では、たとえ蛍光灯下であっても、すみやかに効力が低下します。その結果を表2に示します。牛乳や血清などの汚れが混入すると、分解が促進されるのです。たとえば、洗浄不十分の経管栄養ボトルを次亜塩素酸ナトリウム液に浸漬すると(次亜塩素酸ナトリウム液が目にみえて濁った状態などになると)、次亜塩素酸ナトリウムはすみやかに分解します。したがって、次亜塩素酸ナトリウムの使用では、前もって消毒対象物の汚れを除去しておくことが大切です。汚れの除去が十分であれば、0.01%(100ppm)液の交換は週2回、0.1%(1,000ppm)液の交換は週1回程度でよいです。

表1.蛍光灯下*1および遮光下での次亜塩素酸ナトリウム希釈液*2の残存力価(%)
対象 保管法 残存力価(%)
1日 2日 7日 14日 28日
0.01%
(100 ppm)液
ふた無し容器
(蛍光灯下)
104.2 107.1 104.4 98.2 105.2
ふた有り容器
(遮光)
106.4 99.2 102.6 96.9 100.3
0.1%
(1,000 ppm)液
ふた無し容器
(蛍光灯下)
102.9 102.6 103.4 111.1 114.8
ふた有り容器
(遮光)
98.6 100 102.6 102.3 104

*1 約500ルクスの照度
*2 ミルトンRを希釈

〔尾家 原表〕

表2.牛乳を添加時での0.01%(100 ppm)次亜塩素酸ナトリウム液の残存力価 (%)
牛乳の終濃度 残存力価(%)
直後 60分 24時間 48時間
0% 100 100.5 104.2 107.1
0.1% 75.5 70.0 48.4 36.7
1% 35.0 23.6 16.0 11.4
2% 23.9 20.5 9.9 5.5
10% 2.6 0 0 0

ミルトンRを希釈、ふた無し容器での蛍光灯下(約500ルクスの照度)

〔尾家 原表〕

引用文献
  1. WHO: Avian Influennza, including Influennza A (H5N1), in humans: WHO interim infection control guideline for health care facilities. - update. 10 May 2007.
  2. Deschamps D, Soler P, Rosenberg N, et al. Persistent asthma after inhalation of a mixture of sodium hypochlorite and hydrochloric acid. Chest. 105: 1895-1896, 1994.
  3. Purohit A, Kopferschmitt-Kubler MC, Moreau C, et al. Quaternary ammonium compounds and occupational asthma. Int Arch Occuo Environ Health. 73: 423-427, 2000.
  4. Waclawski ER, McAlpine LG, Thomson NC. Occupational asthma in nurses caused by chlorhexidine and alcohol aerosols. BMJ. 298: 929-930, 1989.
  5. Bolton SL, Kotwal G, Harrison MA, et al. Sanitizer efficacy against murine norovirus, a surrogate for human norovirus, on stainless steel surfaces when using three application methods. Appl Environ Microbiol. 79: 1368-1377, 2013.
  6. Panousi MN, Williams, GJ, Girglestone S, et al. Evaluation of alcohol wipes used during aseptic manufacturing. Lett Appl Microbiol. 48: 648-651, 2009.
  7. Stevens RA, Holah JT. Effect of wiping and spray-wash temperature on bacterial retention on abraded domestic sink surfaces. J Appl Bacteriol. 75: 91-94, 1993.

尾家 重治(山陽小野田市立 山口東京理科大学 薬学部)
2023年12月
感染と消毒ホームページ事務局(幸書房内)
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