洗浄・消毒・滅菌 Q&A

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耳鏡等の取り扱いについて。以前は超音波洗浄、現在は滅菌・個包装としています。やはり滅菌は必要でしょうか?個包装が不評なため、複数個包装も検討していますが、開封後は未使用でも使用不可ですか?(外来 週1)(Y.H.)

耳鼻科領域で使用する耳鏡等の器具は、無菌域には入らないものの、粘膜や損傷した皮膚に接触する可能性があるため、スポルディング分類ではセミクリティカル器具に該当します。クリティカル器具(皮膚や粘膜を穿通、もしくは生体の無菌域に接触する)ではないため、通常は滅菌の必要はありません。ただし、手術創部等に使用するなど、無菌操作で扱う場合は滅菌処理された器材(写真1)を使用します。

セミクリティカル器具は原則、高水準消毒処理が必要です。具体的には、洗浄後に高水準消毒薬による消毒もしくは熱水消毒を行います。セミクリティカル器具の一部、例えば口腔に用いる体温計等は中水準消毒処理を行います。また、耐熱性があり高圧蒸気滅菌が可能な場合は、高水準消毒薬による消毒ではなく、高圧蒸気滅菌を選択することがあります。高圧蒸気滅菌は高水準消毒薬の使用と比較し、簡便で効果が確実であり従事者の化学曝露も回避できる方法です。

耳鼻科器材は使用頻度を考慮し、ユニットに器材一式を並べて準備しておくことが多いです(写真2)。熱水処理された器具は、清潔な蓋付きの容器(写真3)に保管し、必要数をユニットに準備します。使用後は速やかに蓋付きの回収容器に入れ、付着した血液・体液・薬品などによる汚染が乾燥・固化しないよう留意します。

複数個を1つの滅菌バッグに入れ、滅菌処理も可能です。その場合も滅菌処理前に器具の洗浄は必須です。滅菌バッグは開封した時点から滅菌状態の維持は保証されません。外来が週に1日であれば、その日に使用する量(予測値)の器具を滅菌し使い切る(未使用分も含めて再生処理する)などを検討するのも良いでしょう。


写真1.滅菌済みの耳鏡


写真2.ユニットにセットされた耳鏡等


写真3.清潔な蓋付きの容器


小野 和代(東京医科歯科大学 統合診療機構 機構長補佐・医学部附属病院 医療安全管理部GRM・認定看護管理者 感染管理認定看護師)
2024年06月
感染と消毒ホームページ事務局(幸書房内)
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