人工呼吸器や吸引を要する患者が多い病室では、周囲環境、特に高頻度接触面における微生物汚染のリスクが高いため、衛生管理に十分配慮する必要があります。ベッド周囲に適切な保管スペースが確保できない場合には、職員のみがアクセス可能で、かつ通気性のある場所での管理が望ましいです。
具体的な保管場所・方法として、個人ごとに区分けされた共用棚、歯ブラシ同士の接触を避けて乾燥が可能な壁掛けネット(図1参照)、専用カートなどを用いた個別ケースによる管理が考えられます。これらの方法は、衛生面の確保とともに、日々のケア業務の効率化にも寄与します。
歯ブラシやコップの衛生管理の基本として、①個人専用とすること、②他の人の用具と接触しないよう保管することがあげられます。
歯ブラシは、使用後に流水で10秒以上毛先をもみ洗いし、風通しの良い場所で毛先を上にして立てて乾燥させます。通常は消毒の必要はありませんが、感染症リスクが高い場合には、0.01%の次亜塩素酸ナトリウムによる消毒を検討することも可能です。毛先が乱れてきた場合は、1ヶ月程度を目安に交換することが推奨されます。
衛生的な保管を維持するために避けるべきこととして、濡れたまま容器に保管すること、複数の歯ブラシを1つの容器にまとめること、毛先を下にしてコップに立てるなどがあります。これらの方法は、細菌の繁殖や交差汚染の原因となる可能性があります。
口腔ケアは毎日欠かせない日常的なケアの1つです。衛生管理の基本を押さえたうえで、従事者の負担が少なく、かつ実用的な管理方法を現場の状況に応じて考えましょう。
小野 和代(東京科学大学病院 看護部 副看護部長 医療安全管理部GRM)
2025年11月