「同一患者・同一ケア内で、手袋が目に見えて汚れておらず破損もない場合に限り、条件を定めた上で手袋の上からの擦式アルコール手指消毒を認める」という考え方には、複数の研究報告1,2)があります。
ただし、主要な国際ガイドライン(WHO・CDC)の標準はいまも「手袋を外して手指衛生を行い、新しい手袋を着ける」であり、例外的な運用として位置づけるのが妥当です。
ドイツのロベルト・コッホ研究所の病院衛生・感染予防委員会(KRINKO)は2016年に「医療施設における手指衛生」3)では以下のような勧告を発出しており、手袋着用時の消毒を「例外」として限定的に認めています。手袋をした手の消毒は特別な場合に限るべきとされ、その例は、頻繁な手袋交換が必要なのに経験上それが難しい場面や、交換によって作業の流れが途切れてしまう場面としています。加えて、手袋の材質の確認(EN374適合)、手袋交換の上限(集中治療では15分ごとなど時間の上限)、除外対象(C. difficileなど芽胞形成菌の患者には適用しない)などを明記しています。
例えば、下記のような条件を明文化し、施設の感染対策マニュアル等に例外として明記し、教育と遵守状況のモニタリングを実施するなどの運用をご検討されるのも一案と考えます。
・同一患者の一連のケアだけでの運用とし、患者間、病室の出入り、ケアの終了時は必ず手袋を外し、手指衛生を行う。
・手袋が血液・体液・排泄物で目に見える汚染のある場合、破損が疑われる場合、変性がある場合などには交換する。
・WHOの手指衛生の5つのタイミングのうち「清潔・無菌操作の前」は、エビデンスが限られリスクも大きいため、原則として手袋交換を行う。
参考文献
- Thom KA, Rock C, Robinson GL, et al. Alcohol-based decontamination of gloved hands: A randomized controlled trial. Infect Control Hosp Epidemiol. 2024 Apr;45(4):467-473.
- Kampf G, Lemmen S. Disinfection of gloved hands for multiple activities with indicated glove use on the same patient. J Hosp Infect. 2017 Sep;97(1):3-10.
- Empfehlung der Kommission für Krankenhaushygiene und Infektionsprävention (KRINKO) beim Robert Koch-Institut (RKI). Händehygiene in Einrichtungen des Gesundheitswesens. Bundesgesundheitsbl 2016 · 59:1189–1220.