洗浄・消毒・滅菌 Q&A

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歯科部門で石こう模型研削時に数µm~50µm程度の粉じんが発生しています(集じん装置は使用)。サージカルマスクは素材性能と実使用時のフィット性が異なると理解していますが、このような場面で期待できる効果や限界、現場への説明・助言の考え方についてご教示ください。(T.A.)

数µmを含む粉じんへの呼吸保護が必要な作業については、サージカルマスクではなく、日本の国家検定合格DS2または米国NIOSH認証N95レスピレーター等の呼吸用保護具の使用を第一選択とします。

歯科部門では、石こう模型のトリミング・研削に伴い、肉眼で確認できる粗大粒子だけでなく、数µm程度の微細粒子を含む粉じんが発生し得ます。歯科技工環境を対象としたBruneらの研究1,2) では、石こう等の研削作業で、肺の奥まで到達し得る微細な粉じんが生じることが報告されています。石こうは結晶質シリカそのものではないものの、粉じんによる眼・粘膜・上気道刺激等を起こす可能性があります。サージカルマスクは、大きな飛散粒子や飛沫へのバリア、吸入粉じん量の一定の低減は期待できますが、素材単体の粒子捕集性能(BFE/PFE等)の表示と、装着者が実際に得る粉じん防護性能は同義ではなく、微細な浮遊粒子が顔との隙間から流入し得るため、顔面への密着を前提とした呼吸用保護具ではなく、限界があります。

米国の国立労働安全衛生研究所(National Institute for Occupational Safety and Health:NIOSH3,4))は、サージカルマスクは飛沫・飛散物等へのバリアとして有用である一方、顔との間に隙間があるためエアロゾル化した粒子に対して信頼できる防護レベルを提供せず、呼吸用保護具ではないと明示しています。日本では空気中の粒子状物質の吸入防止を目的とする呼吸用保護具として、防じんマスクの国家検定制度が設けられています5)。DS2は使い捨て式防じんマスクの区分2で、規格上の粒子捕集効率は95%以上です。したがって、粉じん吸入防止を目的に個人防護具を選択するのであれば、サージカルマスクよりも目的に適合した防じんマスクを選択するのが合理的と考えます。なお、呼吸用保護具は顔面にあう適切なサイズを選択し、装着時の密着確認を行うことも重要です。

参考文献

  1. Brune D, Beltesbrekke H, Strand G. Dust in dental laboratories. Part II: Measurement of particle size distributions. J Prosthet Dent. 1980;44(1):82-87.
  2. Brune D, Beltesbrekke H. Dust in dental laboratories. Part III: Efficiency of ventilation systems and face masks. J Prosthet Dent. 1980;44(2):211-215.
  3. NIOSH. Healthcare Respiratory Protection. Surgical masks are not respiratory protective devices; N95 filtering facepiece respirators are tight-fitting respirators.
  4. NIOSH. Pocket Guide to Chemical Hazards: Gypsum. REL: TWA 10 mg/m³ (total), 5 mg/m³ (respirable).
  5. 厚生労働省. 防じんマスクの規格(昭和63年労働省告示第19号). DS2の粒子捕集効率:95.0%以上.

黒須 一見(国立健康危機管理研究機構 (JIHS) 国立感染症研究所 応用疫学研究センター 応用疫学開発部 第二室)
2026年09月