洗浄・消毒・滅菌 Q&A

回答については、質問をいただいた時の基準に沿って回答しておりますので、現時点とは異なっている場合もございます。

ジフィシル菌(ディフィシル菌)を便から排泄している非下痢者を、共用のジェットバスで入浴させる際の扱いをご助言願います。 1.入浴の可否 2.使用後、特別な除菌は必要? 3.同日で次に入浴した方について、感染監視は必要?(M.E.)

クロストリディオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile )は、健常者も保菌していることがあるため、スクリーニングではなく、下痢を発症しC.difficile感染症(C.difficile infection : CDI)を疑うときに検査をすることが推奨されています。このことを前提とし、今回は感染症に罹患後、下痢が解消された状況を想定して回答いたます。

C.difficileの感染経路は糞便の経口感染です。菌が芽胞を形成し、空気中に舞った芽胞を経口摂取し感染するため、隔離と接触予防策を実施します。特徴として、乾燥環境表面に長期生存する1)ため環境汚染の対応も重要です。近年、IDSA(Infectious Diseases Society of America)とSHEA(The Society for Healthcare Epidemiology of America)のガイドライン2)では、対策継続期間を「下痢消失48時間まで」、国内のClostridioides difficile感染対策ガイド3)では「下痢が解消してから少なくとも48時間を目安とする」と推奨されています。

上記対策ガイド等を考慮すると、下痢解消後48時間以内であれば対策継続を推奨します。環境消毒は、0.1%次亜塩素酸ナトリウムを使用し3,4)、ジェットバスは、洗浄後に0.1%次亜塩素酸ナトリウムで清拭消毒を行います。お湯が循環する配管部分の消毒は困難ですので、洗浄目的の運転をされるとよいでしょう。患者が浴室を使用する順番を最後にすることにより、丁寧な洗浄と消毒ができる時間の確保をされるとよいです。また、紫外線照射による消毒も有効ですのでご検討ください。

対策解除は、各病院で基準を設定することになります。下痢が解消されてもC.difficileはしばらく検出されるため、対策解除のための陰性確認は不要とされています。下痢解消後48時間以降の菌検出は保菌状態とみなし、標準予防策で対応されてもよいでしょう。

健康監視については、発症者に限らず保菌者が1名でもいらっしゃる場合は、病棟等の集団全体に対し注意深く観察することをお勧めします。

最後に、入浴の可否は菌検出の有無ではなく、ご本人の全身状態によります。加えて、対策とリスク等総合的に考え、ご判断されるとよいです。

引用文献
  1. Kramer A, Schwebke I, Kampf G.:How long do nosocomial pathogens persist on inanimate surfaces? A systematic review. BMC Infect Dis 2006;16:130.
    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1564025/
  2. McDonald LC, Gerding DN, Johnson, et al. : Clinical Practice Guidelines for Clostridium difficile Infection in Adults and Children: 2017 Update by the Infectious Diseases Society of America (IDSA) and Society for Healthcare Epidemiology of America (SHEA).
    Clin Infect Dis 2018 ; 66 : 987-994.
    https://academic.oup.com/cid/article/66/7/987/4942452
  3. 日本環境感染学会.Clostridioides difficile感染対策ガイド.環境感染誌.Vol. 37, Suppl. II.2022
    http://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/CDI_guideline.pdf
  4. 大久保憲, 尾家重治,金光敬二:2020年版消毒と滅菌のガイドライン.へるす出版.2020.

岡﨑 悦子(横浜市立脳卒中・神経脊椎センター 医療安全管理室 副室長)
2023年08月
感染と消毒ホームページ事務局(幸書房内)
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