女性診療科の洗浄嘴管は、患者に直接接触しない器具であり、ノンクリティカル器材(創のない正常な皮膚と接触するもので、粘膜とは接触しない器材)に分類されます。よって女性診療科の洗浄嘴管は、滅菌の必要はなく、洗浄後に低水準消毒処理もしくは水拭きを行います。
現在、「1本を1週間使用し滅菌している」とあり、1患者使用ごとにどのような処理がなされているのかが懸念されます。たとえ直接接触がなくとも、洗浄時の液の飛散などにより器具が汚染される可能性があり、交差感染のリスクを考慮した対応が求められます。
具体的には、1患者使用ごとに洗浄嘴管(洗浄+低水準消毒済み)を交換します。その運用が困難な場合には、1患者使用ごとに環境クロス(低水準消毒薬)による清拭消毒を行い、終業時に嘴管を取り外し洗浄・消毒する、簡易的な方法も考慮できます。
現行の方法は、嘴管の洗浄もしくは低水準消毒に加えて、洗浄液の交換および洗浄液槽の洗浄・消毒が必要です。洗浄液には第四級アンモニウム塩などの低水準消毒薬を使用することから、洗浄液の微生物汚染を考慮し、毎日交換する必要があります。その点は診療ユニットの取扱説明書1)でも「使用後、残った洗浄液は、本体から洗浄装置を取り外して排水し、消毒します」との記載があります。
以上から、現行の方法を適切に実施するには相応の労力が必要となり、感染対策・作業効率・コストのバランスを考慮した代替手段として、①消毒綿球(用時調整)による局所消毒、②プラスチックアンプル入りの蒸留水や生理食塩水(20mL)による適宜洗浄、などの方法を導入している施設もあります。
引用文献
- アトム診療ユニットEU-70 取扱説明書
小野 和代(東京科学大学病院 看護部 副看護部長 医療安全管理部GRM)
2025年07月