洗浄・消毒・滅菌 Q&A

回答については、質問をいただいた時の基準に沿って回答しておりますので、現時点とは異なっている場合もございます。

CDCの消毒と滅菌のガイドラインにおいては、スポルディングの分類でセミクリティカルの器具は高水準消毒という記載があるが、日本の消毒と滅菌のガイドラインにおいてはセミクリティカル器具は中水準または高水準となっている。この差について、どのように考えればいいか?(T.T.)

ご質問どおり、CDCでは、セミクリティカル器具に対して高水準消毒を推奨しています。一方、高水準消毒は、グルタラール、フタラール、過酢酸などの高水準消毒剤に加えて、中水準消毒剤の次亜塩素酸ナトリウムでも可能と述べています。しかし、次亜塩素酸ナトリウムをセミクリティカル器具用の消毒剤としてあげていません。この理由は、セミクリティカル器具のおもな消毒対象が内視鏡であり、内視鏡に対しては次亜塩素酸ナトリウムは金属腐食性や有機物(汚れ)の存在下での効力低下などから適さないからです¹,²⁾。

一方、日本の「消毒と滅菌のガイドライン」では、セミクリティカル器具に対して次亜塩素酸ナトリウムもあげています³⁾。セミクリティカル器具のうちのプラスチック器具(人工呼吸器回路など)の消毒には次亜塩素酸ナトリウムが使用可能との観点からです。プラスチック器具にグルタラール、フタラールおよび過酢酸を用いると、残留毒性が問題になります。

以上から、CDCと「消毒と滅菌のガイドライン」とに、セミクリティカル器具の消毒において表現法に差が生じていますが、実質的な差はありません。「消毒と滅菌のガイドライン」では、セミクリティカル器具として内視鏡のみならず、プラスチック器具も考慮しています。

引用文献

  1. Rutala W. APIC guideline for selection and use of disinfectants. Am J Infect Control 1996;24:313-42.
  2. CDC : Guideline for disinfection and sterilization in healthcare facilities,2008.
    https://www.cdc.gov/infection-control/media/pdfs/Guideline-Disinfection-H.pdf
  3. 大久保憲,尾家重治,金光敬二.消毒と滅菌のガイドライン2025(へるす出版).

尾家 重治(山陽小野田市立 山口東京理科大学 薬学部)
2025年09月
感染と消毒ホームページ事務局(幸書房内)
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